Point
- 不安がある時ほど、まず何に備えたいのかを言葉にする。
- 保険を増やす前に、家計・現金・公的制度を確認する。
- 必要な備えと不要な備えを分けると、固定費を抑えやすい。
何が心配か具体化する
家計と生活防衛資金を確認する
必要な保障だけを検討する
読みながら確認したいこと
- 不安の中身を病気・死亡・収入減などに分けた
- 公的制度や勤務先制度を確認した
- 保険料が家計を圧迫していない
不安を商品で埋める前に
「病気になったらどうしよう」「子どもに何かあったら」。そんな不安を感じたとき、いちばん手軽な解決策に見えるのが保険です。加入した瞬間、「備えた」という安心感が得られますから。
でも、ここで一度立ち止まってほしいのです。その安心感は、不安の正体を確かめた上でのものでしょうか。「なんとなく不安だから、なんとなく保険に入る」を繰り返すと、保険料はどんどん積み上がります。月3万円の保険料は、30年で1,000万円を超えます。それだけの支出に見合った備えになっているか、確認する価値は十分にあります。
不安への正しい向き合い方は、商品を探すことではなく、不安を分解することです。何が起きるのが怖いのか。それが起きたら、いくら必要なのか。その金額は、すでにある備えでカバーできないのか。この順番で考えると、本当に保険が必要な部分は、思ったより狭いことに気づきます。
まず社会保障と家計を見る
日本で会社員として働いている方は、実はすでにかなり手厚い「保険」に入っています。公的な社会保障です。ここを知らずに民間保険を検討すると、同じ保障に二重に払うことになります。
たとえば医療費なら、高額療養費制度があります。収入にもよりますが、月の医療費の自己負担には上限があり、一般的な収入の方なら月10万円を超えることはそう多くありません。病気で働けなくなった場合は、傷病手当金として給与のおよそ3分の2が最長1年6カ月支給されます。万一亡くなった場合には、遺族年金があります。
さらに、勤務先によっては付加給付や団体保険など、上乗せの制度があることもあります。まず公的保障と勤務先の制度で「どこまでカバーされているか」を確認し、足りない部分だけを民間保険で埋める。これが保険を考える正しい順番です。
生活防衛資金で対応できること
公的保障の次に確認したいのが、手元の現金、つまり生活防衛資金です。生活費の半年分から1年分の現金があると、実は多くの「もしも」に対応できてしまいます。
入院して数十万円かかった。家電が壊れた。転職で収入が数カ月下がった。こうした出来事は、起きれば確かに痛いのですが、生活防衛資金があれば家計が壊れるほどではありません。現金という備えの強みは、何にでも使えることです。医療にも、失業にも、保険の対象外の出来事にも、同じ現金で対応できます。
だから、順番としては保険より生活防衛資金が先です。「保険料に月3万円払っているけれど、貯金はほとんどない」という状態は、備えの配分が偏っています。まず現金の土台を作り、現金では対応しきれない大きなリスクだけを保険に任せる。この役割分担が、いちばん無駄のない備え方です。
固定費が増えるリスク
保険の見過ごされがちな側面は、それが「毎月必ず出ていく固定費」だということです。保障を増やすことは、同時に家計を重くすることでもあります。
固定費が重い家計は、変化に弱くなります。収入が下がったとき、子どもの教育費が増えたとき、身動きが取りにくい。皮肉なことに、「もしもに備える」ための保険料が、もしもが起きたときの家計の柔軟性を奪ってしまうのです。
また、保険料に家計を圧迫されて、生活防衛資金や積立投資に回すお金がない、という本末転倒もよく見かけます。保障と引き換えに、資産形成の機会を失っている状態です。保険を検討するときは、「この保険料を20年払い続けたら総額いくらか」「同じ金額を貯蓄・投資に回した場合とどちらが安心か」という視点も持ってみてください。
保険が必要な場合もある
ここまで保険に慎重な話をしてきましたが、保険が本当に力を発揮する場面も、はっきりあります。それは、起きる確率は低いけれど、起きたら現金では到底対応できない損失です。
代表例は、小さな子どもがいる家庭で、家計を支える人に万一のことがあるケースです。遺された家族の生活費と教育費は、数千万円規模になることがあり、貯蓄でカバーできる家庭は多くありません。ここは掛け捨ての死亡保障が合理的な場面です。ほかにも、自動車を運転するなら対人対物の賠償、持ち家なら火災保険のように、損失が青天井になり得る領域は保険で備えるべきです。
つまり、保険は「不安だから入るもの」ではなく、「現金で対応できない大きさのリスクに絞って使う道具」です。この基準で見直すと、必要な保険は意外とシンプルに絞れて、そのぶん保障額はしっかり厚くできます。
商品販売をしない立場で整理する
保険の相談には、構造的に難しい問題があります。相談相手の多くが、保険を売ることで収入を得ているという事実です。悪意がなくても、販売手数料が絡む以上、「入らない」「減らす」という選択肢は提案されにくくなります。
私は保険商品の販売も紹介も行いません。収入は相談料だけです。だから、「その保障は公的制度でカバーされていますよ」「保険より先に、現金を貯めましょう」と、売る立場では言いにくいことも率直にお伝えできます。
ご相談では、あなたの家族構成と家計から、備えるべきリスクを一緒に洗い出し、公的保障・現金・保険の役割分担を整理します。今入っている保険の証券を一緒に眺めて、「これは何のための保障か」を言葉にしていくだけでも、多くの発見があるはずです。不安ではなく、数字と目的で保険を選べるようになりましょう。
今の保険、多すぎ?足りない?と思ったら。
保険を売らないFPだからこそ、中立の立場で保障の整理をお手伝いできます。初回30分の無料相談で、備えの全体像を一緒に確認しましょう。
この記事は一般的な考え方の整理であり、個別銘柄や特定商品の売買判断、投資助言ではありません。家計、目的、リスク許容度に合わせて、自分で判断できる状態を作るための読み物としてご覧ください。